早稲田大学 法学部 

数学嫌いの数学嫌いによる数学嫌いのための不合格体験記

 この体験記の周囲に華々しい結果を手にした仲間達の喜びに溢れた体験記が並んでいる中、私は敢えて落ちた受験生の苦しみなどを明るく(?)綴って後輩に残していこうと思います。
 努力すれば東大にも受かる!と信じるドリーマーは読まない方がいいかも…(笑)しかし、高校数学が辛くて私大一本にするべきかと選択するときが来る可能性がある文系諸君には是非伝えたいことがあるので、以下しばらくすっ飛ばしても、最後の方を少し読んでみて下さい。

 前期に落ちるその瞬間まで、私はまさか1週間も対策をしていないワセホーに進学するなんて思っていませんでした。実感が押し寄せたときは血の気が引きました。ぶっちゃけ、周りには「自信ないです~、落ちたかも~」と言って、発表前はビビリなどしつつも、手応えでは受かってました(笑えない)
 検察官になりたくて、阪大法学部を意識しだしたのはおそらく高1の時で、塾頭に「ちゃんと勉強していけば、阪大くらい目指してもいいんじゃないか?」と言われてから3年間、第一志望を譲りませんでした。当時は夢のまた夢、雲の上の旧帝大。ここに合格れば周囲の皆がきっと喜んでくれるし、恩返しにもなる。敬愛する森口先生の後輩になりたい、というのも大きな理由でした。
 ちゃんと勉強できたのか分かりませんが、実際挑戦できるレベルくらいにはなれたと思いたいです。どのくらいかというと、とんでもない頭の持ち主が群れる初年度文理科学でも、文系だけなら5本指には…たぶん。

 私は英語・国語が武器で、国語は勉強らしい勉強をしていません。英語も塾の宿題だけでした。(そのせいなのか秋冬にスランプに見舞われ、森口先生には多大なご心配をおかけしました。)なので、弟にはアドバイスできません。「自力でどうにかしろ。というか、人に聞く前に文法入れろ!構文をとれ!アホ!!」
 そして数学があり得ないほど出来ませんでした。振り返ってみれば、私が3教科中一番勉強したのは数学です。本当にやっていたのかと先生方に信じていただけるか分からないくらい…とにかく中学時代から苦手でした。数学が足手まといであるという自覚は昔からあり、それだけに力を注いで高校受験は何とかなりましたが、高校では限界を見ました。これは悔しかった。

 最終的に前期の教科別難易度が私の得意不得意に合わず、差をつけにくかったのもあると思います。致命的なミスなどはなく、後悔も未練もありません。今は運命だと割り切っています。しかし、運も実力の内…。それが受験でした。


 受験生で辛いのは忙しさです。私は英数のみだったのが3年で英国フル受講。数学のセンター・スタンダードとPlus教室週3コマ。塾生の中でもかなり多い方です。それだけ必死でした。
 年度初めは1年後生きていたら奇跡だと思うほど忙しかったですが、慣れます。
 高2・高3はただ耐えて下さい。気合いです。勉強も忙しかったですが、福高は行事も全力投球。私も色々やりました。2年の文化祭では某君のように2日連続徹夜して演劇「ロミオとジュリエット」の脚本を書き、何故かジュリエットもやってしまいました。
塾では寝てません(笑)
 福高祭はラブロマンスの宝庫ですので要注意です!!私もお祭りムードの中で変なのに引っかかり、半年無駄にしました。唯一の後悔かも知れません。
 みらい学でも個人発表に選ばれるくらい気合い入れてやりました。部活も週2日1時間、合唱部でピアノを弾き、夏までレッスンを受けてストレス発散にしました。
 3年では合唱の伴奏を受け持ち、鈍らないよう毎日練習。ただの浮気にするかは自分次第です。いい経験にもなりますし、うちのクラスでリーダーとかロミオとか(笑)をやって本命に受かった人も大勢います。月並みですが、大事なのは自律と言うことでしょうか?ほどほどに楽しんで下さい。


 ここからは不合格後のお話しです。落ちたときは覚悟していても、人生初の挫折で茫然としました。「ごめん、そういう対象として見れない」とフラれる失恋に近い感覚です。阪大メンバーの中で唯一の不合格。仲間外れ感もあいまって、非常に惨めでした。
 精神的にはかなりタフな自信があり、自分のショックがおさまると、お世話になった先生、苦労かけまくった両親、応援してくれた友達などの顔が浮かんで、「大変なことをしてしまった」と思いました。特に、1年の冬に私が阪大に受かると信じて亡くなったおばあちゃんには、どんな顔して仏壇の前に座ればいいのかと、戒めのために肌身離さず身につけた形見の品を直視できませんでした。
 これまで自分は何をしてきたんだろう。直前期の追い上げでボーダーまでこぎ着けたセンター試験は、苦しんだ数学の対策は何だったのか?進学のために私は試験場で一度得意科目を受けただけ。今までの苦労が何の実も結ばなかったと思うと、払ってきた努力と意図的に無視してきた期待と犠牲が、ただの無駄にしか思えなくなりました。最後の最後にこけた自分が許せなくて、私の受験は何も残らなかったと、半ば自暴自棄になってしまいました。
 考えなしに旅行気分で受験した早稲田に受かったので、後期の阪大ドイツ語学科は受けないと決めており、前期のあとの私は遊び呆けていました。当然オバカなニートになり果てています。学校の先生に後期受験を強く勧められ、気が乗らぬまま東京へ下宿を探しに行って、丸3日眠れないまま更に惨めになり…
 そんなとき、年度末に配られる塾の入試結果の手紙のことを思い出しました。「このままいけば、自分の欄には私立だけが並ぶ。塾で6年間学んだことを使っての恩返しが何もできない」それってすごく格好悪い!
 そう思った瞬間、ずたずたのプライドが急にムクムクと…、2日しかない対策期間、2年分だけの赤本で臨みました。受験科目が英語だけで、単語の抜け具合に戦慄しましたが何とか合格。
 Masterof英語の授業を受けていなければ、2日ではまず攻略不可能だったと思います。何とか阪大の名を追加できたことで、自分の受験に落とし前が付けられたかと思いますが、これで何とか許して下さい。(汗)前期発表前から続いた体調不良が後期発表日のうちに治ったので、もういいよと身体が告げてくれた気分です。


 受験に当たってのアドバイスの1つは、辛そうな顔をできるだけ見せないことです。模試が悪かったとか、先生に怒られたとか、凹む機会は山ほどあります。それはみんな一緒です。でも、どんな時でも内申の葛藤を隠して何でも無いように明るく振る舞うことが周りの仲間のためにも自分のためにもなります。
 私はやり過ぎたのか、落ちたことを友達に忘れられていましたが、全く何でも無いわけじゃなくて、後期に向かう電車の中で一人泣きました。
 友達の慰めにはとても救われますが、細かな落ち込みを表に出さず、お互いに言わずとも色々あるんだと察してあげるのも有益な関係だと思います。
 ストレスを溜め込むのではなく、発散しながらも周りにはイライラを伝染させないことを心がけると、受験で苦しんで頑張っている自分も好きになれます(笑)せっかくみんなで戦っているので、みんなで明るく楽しくやって下さい。
 センター前の冬休み、私だけが異様に盛り上がって、塾の下でみんなでやった大縄飛びは良い想い出です。伝統になれば嬉しいですが…


 最後に、冒頭で言った数学嫌いの文系さんへ 
 もし悩んだら、国公立大学を受けて下さい。私は根っからの文系頭で、たびたび「私立向き」と評されもし、何度か早慶一本に潔く切り替えるべきかとも考えました。そこで変えなかったのは、ただひたすら意地とプライドでした。「頑張って、頑張って、やっと合格できる。そんな大学を志望校って言うんじゃないの」進研ゼミのCMのメッセージが、国立大受験を戦う身には沁みました。
 へぼい数学でも、見苦しくても、結局は妥協したくないという意地が身の程知らずとも思われた志望を支えて私を伸ばしてくれたのではないかと思います。
 頑固で負けず嫌いで自意識過剰なかっこつけでなければ、もっと結果は悪かったかも知れません。たとえ届かなくても、選ぶ権利がある位置ならば、挑戦する価値はあると思います。
 自分なりにそれぞれ努力した私立一本の人を貶めるつもりは毛頭ありませんが、必要量が違うので経験と努力、やりがいが違います。レベルを落として受けるのも同じで、私はどうしても勿体ないと思ってしまいます。ですから私は前期の設定を後悔していません。
 引っかかったところが適性、どうせやるなら自分の限界にチャレンジしてみよう、くらいの勢いが丁度いいと思います。
サクラ咲いても散っても、結果は違えど大した差があるというわけでもないのが受験です。本人の気付かないような心理的な要因が潜んでいたり、単に運に恵まれなかったり、問題との相性が悪かったり…。もちろん逆だってあり得ます。
 それでも私は、全ての悩める文系学生に国公立を受けて下さいと言いたいです。散れば大きな傷もトラウマも残りますが、経験から学ぶものはとても言葉では伝えられません。よく言うしょうもない精神論のような「気の持ちよう」が私は大嫌いでしたが、自分が物事をどう呑み込み片付けていくかというのは、論理的に考えても後々に響きます。このことは経験しなければ本当に理解できないので、いっぺん落ちてみて下さいとも言えませんし、ただ沈み込まないようにとしか言いようがありません。
 落ち込んでも一人で塞がないようにして下さい。逆に、下を向いてばかりで視野が狭くなっている友達には声をかけてあげて下さい。直接指摘しても本人にはどうにもならないところです。お互い引き上げ合って、本命合格という私の予想も及ばぬほどの幸せを味わって下さい。

 あとになりましたが、教科間のバランスがいつまでたっても平行線だった私を支えて下さった先生方、どん底に落ちていた私を暖かく励まして救ってくれた奥さん、6年間ありがとうございました。
 学進会が私の全ての青春の産地であり、人生の教室でした。必ず3年で卒業して、1年先輩で阪大大学院に舞い戻ってきます。実績には貼れませんが、その時は森口先生、後輩認定して下さいね。


おまけ
 今年度卒業生ぶっちぎりの大食いで、3年間で4キロは太り、皆にお腹の鳴る音を一度は聞かれたであろう私が考える、食べていいもの・悪いもの。
 とにかく食べてはいけないのがドーナツ!ミ○ド。オイシイし、腹持ちイイし100円の時は揺らぐんですが、極力控えましょう。確実にポッチャリのもとです。
 パンとお米で悩んだら、お米の方が燃費をよくしてくれます。お腹空かせて帰ったときにオススメなのが、ワカメやモズクの海藻系。死なない程度に空腹は収まります。便秘解消の強い味方でもあります。
 それから自習続きで、ビブンセキブンに食事が頼り切りになると野菜不足になるので、葉っぱがついた奴を定期的に選ぶことも必要です。飲み物を100%シリーズにするのも一手です。私のような肉食は、レジの前に立ったらつい買いたくなるので、チキンを見てはいけません。あごが膨張してクビがなくなりますので…。

おまけ2
 英語の勉強法を教えて欲しいという某後輩のため、受かったら偉そうに書こうと思っていた文系教科のアドバイス。落ちましたが勿体ないので…センター科目選びの参考にでも。
英語
 文法。頭に入れたら最後、一片たりとも抜かしてはいけない。抜けるなら詰める。単語よりは抜けにくいので、一度入れるとほぼ抜けない…はず。英語は単語だと思っていたらいつまでも伸びません(弟へ)。しかし知らない単語はその場で覚えるつもりで。
 構文を正しく早くとって書き込むこと。難しいものほど論理的な書き込み作業が必要です。読むときは、頭の中で和訳するのでなく、情報(意味が分からなければキーワードの羅列でも)のインプットとその流れを意識。
 世界史・政経とのコンボで難しい文章でも理解の幅がものすごく広がります。
国語
 基本古語をあまり覚えられていなかった私ですが、こちらはそこそこ覚えなければ文章全体のイメージがとれません。ぼんやりとでも、姫君や乳母が頭の中で現代語の会話をしている風景を思い浮かべようとしてみて下さい。関西弁で再生すると、陳腐なようで存外分かりやすい。
 漢文は英語のままです。現代文は、東先生の普遍的戦法を身につけること。油断すると我流が顔を出して点数がとれなくなります。
世界史
 まず好きな人しかとれない科目。ツボな範囲が個々あるはずですが、非ツボの範囲が最も怖い。ムラを出さず、嫌いなところもやるだけで点数はとれます。ほっとくとすぐ抜けちゃう科目なので、頻繁にさわらないと忘れます。
 友達とゴロを作ったり、紛らわしい名前の区別方法を考えたりという遊び半分の作業が後々続きます。私の自作暗記方は数十個。
政治経済
 センター公民受験率ワーストの科目です。確かに難しいですが、知らなきゃ騙されるような知識が多いです。その割に自分が生まれたずっと後の話で聞いたことないことや、常識の長すぎる延長が多く、最初はサッパリですが細かい関連項目を我慢して覚えれば安定してとれるようになります。
 新聞を読むのも効果的。ちょっと極めて親に質問などして苛めてみましょう。ストレス解消になります。