東京大学 理科Ⅰ類

【目次】
0)はじめに
1)受験結果
2)3年間+α の流れ
3)共通テスト対策
4)二次試験対策
5)最後に

【はじめに】
 この合格体験記を読もうとしていただきありがとうございます。僕は第一志望だった東京大学理科Ⅰ類に合格し、この4月から東京大学に進学することになりました。僕同様に東京大学を第一志望としている方にも、そうでない方にも参考になるように書いたつもりなので、ぜひ最後まで読んで下さい。

【受験結果】
東京大学 理科Ⅰ類 一般選抜(前期日程) 合格
早稲田大学 基幹理工学部 学系Ⅱ 一般選抜 合格
東京理科大学 理学部応用数学科 A方式 特待合格
東京理科大学 理学部応用数学科 B方式 特待合格
防衛医科大学校 医学部医学科 1次合格(二次試験は辞退)

【3年間の流れ+受験日前後の過ごし方】
 中3の冬~高1・・・学校の授業が終わった後、9時過ぎまで塾の自習室に通うようになりました。自習内容は塾の授業の予習復習がメインでした。なお、この頃は東北大や京大を志望していました。
 高2・・・模試で京大のA,B判定を取れるようになってきましたが、周囲の助言もあり東大を志望し始めました(東大はC,D判定が多かったです)。自習も毎日10時までするようになりましたが、とにかく数学と英語をしていました(もう少し理科をすれば良かったと今思います)。
 高3一学期…自習は塾の閉まる11時までしていました。この頃から国理社も本格的に勉強するようになりました。
 高3夏休み…苦手だった理科と数Ⅲを中心に国数英理社全ての基礎を完璧にしようとしていました。ただ、応用的な問題演習の時間があまり取れず、冠模試の結果も決していいものではありませんでした。
 高3二学期…自分は共通テスト模試が得意だったので数理英は基本的に二次試験の対策をしていましたが、国社は共通テスト用の問題集で勉強していました。この頃から応用的な問題集をメインで触るようになり、東大の過去問も少しだけ触っていました。冠模試の結果が良く、東大受験が現実味を帯びてきたのもこの頃でした。
 高3冬休み…年内は駿台の東大対策の授業を受けに大阪まで行っていました。空きコマは授業の予習復習を除いて共通テストの予想問題集と過去問をずっとしていました。年明けからは完全に共通テスト対策に切り替え、予想問題集のパックを使って通しの練習をしながら基本知識の復習もしていました。
 共通テスト当日…早めに試験会場に到着しておき、待合室で勉強していました。文系科目を受ける初日には地理の一問一答で知識を確認した一方で、理系科目を受ける二日目は頭を動かすために予想問題集(特に物理第一問の小問集合は時間もかからずいろんな分野を触れておすすめ)をどの科目も少しずつ触っていました。
 共通テスト後…共通テストが830点という自己ベストを取れたので東大に出願をしました。学校のにじゼミに通い、駿台の直前講習にも行きました(にじゼミはどの授業も良かったし、駿台の東大ストラテジーの授業は特に良かった)。私立対策については、東京理科大は一切せず、早稲田は赤本で4、5年分解きました。それ以外は基本的に東大の過去問(+冠模試の過去問)を解きながら抜けている知識があればその都度入れ直していました。
 二次試験二日前~前日の夜…入試の二日前に東京につきました。東京に着いたらまず周囲のコンビニや飲食店をある程度リサーチし、当日に飲むコーヒーをどこで買うかなども決めておきました。前日は駿台の自習室の利用権があったので、駿台で自習をしていました。また、ホテルに自習室が付いていて、ホテルでも勉強に集中できました。夜はとにかく早く寝ようと思い、眠たくなくてもアイマスクをしてベッドで横になっていました。
 二次試験当日(二日間)…電車がとても混むので、開門頃に会場に着くようにホテルを出発しました。万が一遅延しても大丈夫なよう行きは電車で向かい、無駄な労力をかけないために帰りは(奮発して)タクシーでホテルに戻りました。一日目の夕食はサッと食べられるようなチェーン店を選び、お腹を壊さないよう辛いものは避けました。とにかく終わった科目のことを考えないようにし、解答速報は一切見ませんでした。
 二次試験後…早稲田に合格していたので後期は受けないことにしました。ここは各個人の考え方次第だと思うので、後期勉強のモチベーションの維持などは他の方の体験記を参考にしてください。


【共通テスト対策】
 教科ごとに共通テストで自分がした勉強やアドバイスを書きます。僕は基本的に過去問と予想問題集で対策を行ったので、使用した参考書等は地理を除いて書いていません。

○国語(現代文…78点 古典…92点)
 最初の共通テスト模試は130点前後でした。点数を伸ばすのに大切なのは「古典の基本知識を完璧にすること」「たくさん演習を積むこと」「自分がなぜ正解できたか、間違えてしまったかを理解すること」の3つだと考えます。
 まず、共通テストの古典は単語や文法の知識さえあれば解ける問題がほとんどです。逆に知識無しに解ける問題はないので基礎知識は必ず完璧にしてください。
 次に、過去問や予想問題でとにかくトレーニングしてください。初めは時間がかかってもいいので正確性を重視して、徐々に時間に間に合うように時間配分を考えながら解いてみてください。
 そして一番大切なのは、自分が解いたプロセスを解説と比較してください。間違えた時はもちろん、正解していた時も自分が論理的に答えられていたかを必ず確認してください。これを怠るといつ正解できるかが分からないので、国語での大失点に繋がります。僕は直前期にスランプに陥って、9割手前だった点数が急に6割程度に落ちてしまいましたが、自分が感覚的に問題を解いてしまっていることに気づいて正解できた問題の思考パターンを再現することで論理的に高得点を再び取れるようになりました。国語は知識と論理で解ける教科だと覚えておいてください。
○数学(1A…100点 2B…93点)
 僕は共テ数学が得意だった(高2で既に本試を時間内で9割取れていた)ので対策をほとんど取っていません。アドバイスをするなら、数学が得意な人は100点を目指さないようにしてください。100点を目指してしまうと前半に解けない問題が来た時に固執して時間が無くなってしまう恐れがあるからです。1、2問ぐらいは仕方ないと割り切るのも本番は大切です。問題が解けない人は、設問全体の流れを汲み取るクセをつけてみてください。設問の前半で使った考え方を後半で再利用することも多いです。問題は解けるが時間が足りない人は、自分がどこで時間を使いすぎているか分析してみましょう。解法を思いつくのに時間がかかるのか、あるいは計算に時間がかかるのか、これが分からないと時間短縮のためのトレーニングすらできません。ただ、焦ってミスをしては意味がないので正確性を必ず最重視してください。
○英語(リーディング…94点 リスニング…90点)
 リーディングに関しては、自分流の解き方を持つことが大切だと思います。僕は前半の第1、2、3問は設問と選択肢を確認してから文章の中で答えを探す感覚で読んで、後半の第4、5、6問は設問の順番が文章の順番とほぼ一致しているので文章を読みながら意味段落(話の流れ)が変わったタイミングで都度設問を確認し解ける問題があれば解く、という形をとっていました。あと、リーディングの本試は予想問題と比べて凝った言い換えが多い印象でした。なので予想問題で時間配分を含めた自分のスタイルを確立して、過去問を使って質の良い難しい問題も解けるようトレーニングしてください。
 リスニングに関しては、予想問題や過去問をとにかくこなすのがいいと思います。英語のラジオ等も耳を慣らす目的では効果がありますが、聴くことと聴きながら問題を解くことは作業量が全然違うので、リスニングの問題を解くことに意味があると思います。また、慣れてきたら先読みをするようになると思います。もちろん先読みも大切ですが、先読みのし過ぎにならないよう気をつける必要があります。音声の冒頭を聴き逃すことが多い時は先読みのし過ぎの可能性があるので、目の前の設問を大切にするよう改めて心がけてください。
○理科(物理…100点 化学…89点)
 物理に関しては、時間に1番余裕のあるテストだと個人的には思います。最初の小問集合は設問の流れがなく、ミスが多発しやすいので時間を割とかけていいと思います。
 化学に関しては、新鮮味のある二次試験に近いような問題が比較的多く、難しい問題が物理より多い気がします。どちらも二次対策をしていれば共通テストは基本的に取れるようになると僕は思います。
 また、共テ理科でミスを減らすために僕は「他の選択肢の存在意義を考える」ということをしていました。例えば、与えられた温度T[℃]がセルシウス温度だと気づかずに絶対温度として計算してしまっても、他の選択肢に「T+273」が含まれていたら自分のミスに気づくことが出来ます。僕はこのようにして出題者の用意したひっかけを探りながら解いていました。ただ、小手先のテクニック以前に知識が入ってない人は絶対解けないので、予想問題や過去問を解きながら、直接問われた知識だけでまくそれに関連する知識も確認するようにしてください。
○地理B(94点)
 地理を選択する多くの人が共通テストまでで、2次試験では使わないと思います。そのため地理の勉強は疎かになりやすく、模試の結果に焦っている人も多くいるでしょう。僕も最初の模試は5割程度しか取れませんでしたが本番では9割を取ることが出来たので、3年生の皆さんはこの1年頑張れば点数をまだまだ伸ばせます。
 僕は黄色本(改訂版 大学入学共通テスト 地理Bの点数が面白いほどとれる本)を参考書兼ノートみたいな感じで色々書き込みながら勉強していました。問題演習としては「瀬川聡の 大学入学共通テスト 地理B超重要問題の解き方」を2~3周した後、秋冬から予想問題を解いていました。また過去問が学校のプリントとして配られていたので10年分ほど解いていました。予想問題にせよ過去問にせよ、全ての問題で解説はじっくり読むようにしてください。自分の解き方があっていたのか、あるいはもっと簡単に解けるための知識があったのか。正解した問題からも吸収できることはたくさんあります。
 僕は点数が順調に上がって年内には8割程取れるようになれましたが、12月末にスランプに陥って予想問題で思うように点が取れなくなりました。そこで「大学入学共通テスト 地理Bの点数が面白いほどとれる一問一答」を買って知識の再確認をすると、再び点数が回復しました。「大学入学共通テスト 地理Bの点数が面白いほどとれる一問一答」はただ用語を問うのでなく、正誤問題がメインなので演習している感じもあって結構オススメです。なかなか点数が伸びない人はとにかく演習をたくさんしながら知識を吸収するという、基本の勉強を大切にしてください。
○まとめ
 改めて僕の点数は830/900でした。これは東大合格者の中でも相当高い方です。僕は共通テスト形式が得意だったし本番も自己ベストを20点ほど更新できたほど上ぶれたので、東大志望の人が今の自分の点数に自信をなくす必要は全くないです。ただ、東大京大などの共通テストの配点が二次試験と比べて小さいような大学を志望する人も決して共通テストを疎かにしないでください。点数的にも精神的にも周りにリードできているのはとても大きいアドバンテージなので1点でも多く取れるよう勉強してください。
 どの教科を勉強するにしても共通して言える大切なことは「問題をたくさん解いて練習する」「問題を解く時は時間より正確性を重視する」「全ての問題から知識や解き方のコツを吸収する」の3点だと思います。過去問や予想問題で思うように点が取れないこともあると思います。ただ、手を止めて悩んでも学力は上がりません。不安を解消するには、そして点をあげるには、「とにかく勉強する」 これに尽きると思います。
 そして、共通テスト本番の過ごし方ですが、周りに友人が居るのでリラックスのためにも休み時間は喋って過ごすのがオススメです。次の教科のクイズを出し合うもよし、全く関係ない雑談をするもよしです(終わった教科の話題は厳禁)。共通テストは全員が同じ試験を受けるので周りと競い合いながら互いを高め合いやすいです。みなさん全員で第一関門の共通テストを突破できるよう応援しております。

【二次試験対策】
 ここでは二次試験に向けて僕が行った勉強や、東大入試の傾向・対策を僕なりにまとめました。東大を受験しない人にとっては少し関係のない部分もあると思いますが、参考になることもたくさんあると思うのでぜひ必要な教科は読んでみてほしいです。
⚪︎国語(33/80)
  東大理系は現代文40点、古文20点、漢文20点からなる80点満点のテストで、試験時間は100分です。僕が本番で取った33点は割と低いと思います(本当は最低でも35点、できれば40点欲しかった)。理系の人にとって二次試験の国語は割と点数が伸ばしにくく苦しい教科だと思いますが、点数を上げることは可能ですし、国語は周りもあまり取れないのでアドバンテージを作りやすい教科でもあります。
 古文漢文に関しては、共テ対策の繰り返しになりますがやはり知識が重要になります。特に古文単語の第二義は注意して覚えておいた方がいいです。僕は第一義しか覚えていなくて間違えることが多かったです。また、文章の流れを把握して類推する力が共通テスト以上に必要になると思います。特に漢文では傍線部の熟語がわからないことなんてよくあります。漢文の句法や重要語がまとめられた本(漢文必携など)に載っている熟語がわからないのは単なる知識不足ですが、熟語に含まれる漢字の意味、そして文脈(特に筆者の主張)を理解し結びつけて訳を作らないといけないことも多いです。漢文には文章のお決まりの流れがいくつかあるので、今後文章を読みながら知らない言葉を推測する力を養っていってください。
 現代文に関しては、特に伸ばし方がわからない人が多いと思います。正直僕もその一人でした。東大の国語に限定して言えば、(1)~(3)は傍線部に関係のある一部分(意味段落)から問われていて、(4)は傍線が付いていますが実際は文章全体を踏まえる必要がありここで(1)~(3)の内容も利用することになります。(5)は漢字問題で、割と基本的な漢字が多いです(僕はよく間違えていましたが)。現代文の解き方を理解するには、塾や大手予備校の授業を取るのが一番早いと思います。
 文法や単語が入っていることを前提として、おすすめの問題集は冠模試の過去問です。もちろん過去問での勉強も必要ですが、あまり解説が丁寧でなく自分の答案が何点ぐらいかがいまいち分かりにくいです。冠模試の過去問は採点基準が明確なので自分で勉強するのには最適だと思います。また、Z会の通信添削も個人的にかなり良かったです。
⚪︎数学(58/120)
 本番は2完+αでこの点数となりました(3完したつもりだったのに)。まず伝えたいのは「難しい問題は解く必要ない」ということです。東大理系数学は150分で20点×6題=120点満点の試験です。そして、数学を一番の得点源にしたい人、あるいは理三を狙う人を除いて数学は半分の60点(例年の合格者平均点)を目標にすれば良いと思います。そして、東大理系数学は6問のうち「やや難」「難」のどちらかで評価される問題は例年1、2問です(年によっては3問以上のこともありますが、そんな年は平均点も低い)から、評価が「易」「やや易」となる問題(1、2問)を確実に取り切り、残りの「標準」の問題で1完+αできれば60点には多少の余裕を持って届きます。
 そのため、重要になるのが典型的な問題を確実に取れるようになるということです。これは決してチャート式のように問題と解法を一対一で暗記してしまえと言っているのではなく、スタンダードな解法(グループに分けて確率漸化式/独立2変数と予選決勝法/場合分けが必要な回転体などは特に東大がよく好む解法)を理解し道具として持っておくことが大事だということです。
 そして、解説を読むときは問題を見た時の分析とその分析から解法を導き出すプロセスがあっていたかを確認してください。解法を覚えるだけでは限界がきますが、分析と解法までのプロセスは汎用性が高いのでどんどん吸収していってください。
 僕が使っていた参考書は最上位のレベルではなく、青チャートのエクササイズ、大学への数学の新数学スタンダード演習(1A2B)(←数Ⅲのやつは難易度が1A2Bのものと比べて低いので注意)をメインに、上級問題精講も少し触っていました。あとはもちろん過去問も使っていたのですが、秋ぐらいまでは通しの練習はいらないと思います。時間配分も大切なのですが、それ以上に解ける問題をできるだけ増やすというのが大切です。なので問題一つ一つを丁寧に解くようにしてください。
⚪︎理科(物理30/60 化学35/60 合計65/120)
 個人的にはよく取れたと思います。僕は理科があまり得意ではなかったので、本番では5~5.5割取れたらいいなと思っていましたし、なんなら冠模試は行けて4割でした。理科が得意な人はもっと取れているので、合格者の中では割と低い方ではありますが。東大を志望する人は理科の目標は大体6割程度に設定するのがスタンダードだと思います。
 東大の理科は2科目合わせて150分、120点満点です。そして「全問記述」です。二次試験の理科で全問記述の大学はかなり珍しいですね。ただ、東大理系を志望する人がよく「数学のように丁寧に記述しないといけない、記述のせいで時間も解答欄も足りない」と勘違いしているのですが、そんなことはないです。まず、化学に関しては計算問題や指示のある場合を除いて答えだけ書けばいいです。構造決定なんてどう記述するねん、みたいな感じですし。物理や化学の計算問題も計算式(+式の名前)だけを書いておけば十分です。そもそも、他大学では理科の二次試験で答えだけを書けばいいという形式が広く採用されている時点で、理科の力を測るのに記述はたいして必要ないということが明らかですし、東大の記述形式に身を構える必要はあまりないので安心してください。ある程度練習したらすぐ慣れてきます。
 むしろ、東大の理科で身構えるべきは時間配分です。物理化学ともに大問が3つずつあり、1題にかけられるのは25分。しかも例年化学の大問は異なる内容の中問2つから構成されているので化学は実質6題です。とてもじゃないけど全部は解ききれません。ただ、理科も数学同様に「取れる問題を解き切る」ことで目標とすべき6割には十分届くと思います。僕も本番で物理の電磁気の問題が全くわからず3/20点ほどだったと思いますが、その分他の取れそうな問題に時間を当てることで物理は全体でなんとか5割をキープできました。化学も中問によっては最後まで解き切れる問題もあり、単純な知識問題(前の問題がわかっていなくても取れる知識問題が後半に出てくることも多い)も拾えてほぼ6割になりました。
 問題集については、化学物理ともにセミナーを繰り返し解いて、加えて化学は「化学の新演習」の難易度1の問題全てと難易度2の一部(特に有機を中心に)を、物理は「難問題の系統とその解き方」の前編と「名問の森」の後編を使っていました。「化学の新演習」は他の問題集と比べて有機の演習が十分量取れるのでおすすめ。僕は夏休み明けから触り始めたせいで時間がなくて難易度2は触りきれなかったですが、難易度2までは全て解く価値があると思います。特に難易度1は割と基本的な知識や典型的な演習を扱えるので1学期からガンガン解いてください。物理に関しては、「難問題の系統とその解き方」は解説があまり丁寧でないしやたら問題が難しいのでオススメしません。「名問の森」は割とよかったです。
⚪︎英語(86/120)
 本番でマークシートがヒットしまくったからかなり高い点数になりました。割と英語のおかげで受かった感がします。
 東大英語は割と特殊というか各大問のスタイルがはっきり決まっていて時間配分や解く順番が他大学以上に大切になるので、大問ごとに話をしようと思います。
まず解く順番と時間配分ですが、自分は ①4B和訳:12分 ②1A要約:11分 ③2A自由英作:10分 ④2B和文英訳:7分 ⑤3リスニング:5+30分 ⑥5長文読解:24分 ⑦1B文補充:11分 ⑧4A文法:8分 の合計118分構成にしていました。
 残った2分は時間をかけたいと思った問題に割り振ったり、英作文を見直しに使ったりしていました。この順番なのもちゃんと意味があります。和訳は文章全体の流れが取れなくても答えやすいので、当日の脳を英語慣れさせるトップに最適。そして要約、自由英作、和文英訳と記述が続きます。この中では和文英訳が途中で手を止めやすいのでリスニングの直前に配置することで、万が一中断してリスニングに移ることになってもリカバリーが効きます。先読み5分を含んだリスニングの後は(英作が終わっていれば)長文に入ります。1Bと4Aはマークシートなので、最悪適当に塗ればいいので後半に配置。特に4Aは正答率が全員かなり悪いので間に合わなくても…という気持ちで最後に置いています。
 次に1Aから順番に対策を書いていきます。なお、()内の時間は上記時間配分を再び書いたものです。点数に関しては冠模試の配点などから僕が独自に分析し予想したものなので非公式であることをご了承ください。
・1A 要約 (11分 10点満点)
 東大の要約は70~80字とかなり文字数が少なく、書く内容をかなり絞らないといけません。初めは「文章の全ての段落に必ず触れないといけない」あるいは「最後の段落だけを書けばいい」などと考えたせいで、冠模試で0点や2点だったこともよくありました。僕が思うに書くことの優先順位は①筆者の主張②最終段落(①と被る場合はカット可)③その他、要約に入れて問題ないもの(←具体例や比喩はもちろんNG)の順です。このうち②までを入れられたら十分合格点だと思います。③はどこを入れるか難しいですが、ここは過去問の解答解説と自分の答案を擦り合わせながら調整して高得点を目指してください。
 特に使った参考書などはなく、過去問を10~15年ほど触りました。
・1B文補充(11分 12点満点)
 非常に対策が難しいです。ただ、得点率は全体的に高いので確実に得点したい大問でもあります。
 第一に文章を全て読むのは速読が得意な人以外かなり厳しいと思います。僕は選択肢にある程度目を通した後、1つ目の空欄まではちゃんと読んで文章の大まかなテーマを捉えた後は文章全体の流れを見失わない程度に空欄の前後だけ読んでいました。選択肢を見るときは指示語、接続後、固有名詞に着目して、対応しそうな語が前後にないか探すとサクサク解けます。これは過去問でトレーニングするしかないと思います。
 例年並び替え問題が1問出されますが、おすすめの文法用参考書は4Aの時に改めて書きます。
・2A自由英作文(10分 12点満点) 2B和文英訳(7分 10点満点)
 この二つは英作文ということでまとめて書きます。英作文で一番大切なのは「中学生にも伝わるように書く」ことです。難しい単語・構文は使わない。自由英作で難しいテーマを選ばない。和文英訳では和文和訳をしてわかりやすい表現に変える。この辺りを意識するとミスも減るし書くのに時間もかからなくなります。スペルミスや文法ミスも初めのうちは仕方がないので自分がどんなミスをするかを学習して同じミスを二度と繰り返さないようにしてください。そして、英作文は「点数を稼ぐ分野」ではなく「点数を落とさない分野」ということを心に留めておいてください。それだけでミスは大幅に減ります。
 自分だけではミスに気づけないので学校や塾の先生に添削をしてもらったりZ会の通信添削をとったりするのがいいと思います。英作文用の参考書や問題集は買っていません。
・3リスニング(先読み5分+音声30分 30点満点)
 リスニングを制する者は東大英語を制する、と思います。時間も点数もリスニングが1/4を占めていますし、大きく差をつけることもつけられることもある大問です。
 まず先読みについて。リスニングの始まる5分前から先読みを始めるとちょうどいいと思います。リスニング開始後も1分程は説明があるだけで英語の音声は流れないので合計6分ぐらい先読みできます。先読みで見るべきは「何を問われているか」「キーワードはないか」の2点です。「何を問われているか」について、問題文には2パターンあるということを覚えておいてください。それは「問題文で完結している」か「選択肢まで1セット」かです。前者は「コンテナ船Aが運ぶものは…?」のように問題に対して答えが音声を聞くだけである程度わかるものです。これに関しては選択肢まで先読みする必要はなく、再生中にあるいは再生と再生の間の時間に音声の内容と照らし合わせるので十分です。後者は「コンテナ船Aについて正しいのはどれか」のように問題文だけで聞き取るべき情報が絞れないものです。これは、選択肢まである程度先読みしないと処理が間に合いません。問題文によって選択肢まで読むか否かを判断してください。
 そして、リスニングの練習をする際に僕が気を付けていたこととして「問題を解く」ということです。要は英語のラジオを聴くのはあまりオススメできないということです。もちろん効果はあると思うし、聞き取る力もあがるとは思います。ただ、東大のリスニングは聴くだけでなく「問題を解く」という処理の部分も大切になります。
 実際に僕が演習に使った問題集を2冊紹介します。一冊目は「鉄緑会東大英語リスニング」です。二冊目は「キムタツの東大英語リスニングSuper」です。ちなみに後者のキムタツの東大リスニングにはBasicと無印とSuperの3種がありますが、この問題集の存在を知ったのが共通テスト後だったのでSuperだけ触りました。二冊とも東大のリスニングの形式に対応した問題集で、やる価値はとてもあります。一学期に触るにはキムタツSuperは多分難しいのでBasicか無印あたりがオススメ。
 夏冠では大体5割しか取れなかった僕でも本番は8割(24/30)取れたので、今自分のリスニング力に自信がない人も正しく継続すれば結果は自然と表れてくれると思います。
・4A正誤問題(8分 10点満点)
 得点率が低く、受験生から割と嫌われている大問です。実際の入試では捨てる人も多いとか。ただ、僕は勉強すればちゃんと伸びる大問だと思います。本番では5問中3問正解できました。
 自分が使った問題集の一つが「高校新演習プログレス 大学受験 英語 文法・語法編」です(たしか塾用教材なのでメルカリ等で中古のものを買わないと手に入らないかも)。この問題集は文法やイディオムについて基本問題からなかなかコアな所まで扱ってくれていて、ちょっとした時間に触るのに最適です。問題ジャンルも空欄補充や並び替え、正誤判定など幅広くて私立対策にもなります。これをやっておけば1Bや5の並び替えにも強くなります。
 さらに正誤問題に特化した問題集が欲しいなら河合出版の「スーパー講義 英文法・語法 正誤問題 -改訂版-」がオススメです。正誤問題がとにかくたくさん載っていて、どんなところが狙われやすいかが解けば解くほどわかってきます。
 ただ、文章中には「意味上」の誤りも含まれているので、文法だけ強くなっても高得点は狙えないのでやはり読解力も重要になってきます。
・4B英文和訳(12分 14点満点)
 シンプルな和訳の問題で、他の単元と比べて特別何か対策を練る必要はないでしょう。単語のレベルはそれほど高くなく、むしろ文構造が複雑だったり省略や倒置でわかりにくくなっていたりする感じの問題が多いので、「ポレポレ英文読解プロセス50」あたりがトレーニングのいい材料になると思います。
・5長文読解(24分 22点満点)
 年によってジャンルは変化しますが、小説や随筆が割と狙われやすいです。正直に言うと僕はこの大問の小説・随筆はずっと苦手だったのでいいアドバイスができないのですが、もっと早い段階から1000語程度の文章(特に小説)を読んで慣れておけばよかったと今になって思います。長い小説は登場人物の多さや時系列の捉えにくさに苦労をするので、早い段階から過去問などを触って慣れておけばもっといい点数が取れたのかなと思います。
⚪︎まとめ
 まず、ここまで書いてきた傾向と対策や僕が行った勉強法はあくまで一例にすぎず、当日どのような形式になるかはわからないと言うことを頭に入れておいてください。実際僕が受験した年では例年出ていた有機化合物の構造決定が出題されませんでした。なので、当日どんな形式でも対応できるような総合的な学力をつけていおいてください。
 そして、自分に合った勉強スタイルを見つけてください。たくさんの合格体験記を読むことできっと自分に合う勉強法、あるいはそれにつながるヒントがわかるでしょう。
 共通テストが終わった後、二次試験まで1ヶ月もあるのかそれとも1ヶ月しかないのかは、共通テストまでにどれだけ二次試験につながる勉強ができていたか次第です。もちろん共通テストを突破しないことには何も始まりませんが、難関大を目指す人は二次試験を常に視野に入れながらこの一年間勉強を続けてください。

【最後に】
 このとても長い体験記を最後まで読んでいただきありがとうございました。この文章が少しでも皆さんの役に立つことを願っています。
 皆さんの代から教科書が改訂されたり共通テストの科目が増えたりして受験に対する不安はとても大きいと思います。ただ、その不安はライバルたちも同じように持っているということを覚えておいてください。そして、仲間たちと支え合いながら受験を乗り越えてください。
 また、合格体験記に書くにはふさわしくない内容かもしれませんが、高校生の間にしかできないことがたくさんあります。受験勉強ばかりに囚われていては高校生活でいろんな経験を積むチャンスを失ってしまう上に、疲れてしまって勉強にも集中できません。実際、僕も高校3年生は文化祭のリーダーをしていました。なので、皆さんも勉強以外に頑張れることを1つ見つけてほしいです。
 最後になりましたが、授業を持ってくださった先生、受験のサポートをしてくれた両親、一緒に戦ってくれた友人たちには感謝してもしきれません。ありがとうございました。

 皆さんの受験がうまくいきますよう、心から願います。